燃料費の高騰や印刷・情報用紙の価格の値上げなど、印刷コストの高騰が続く現在。
印刷業界も大きく影響を受けています。
新型コロナウイルスの流行をきっかけに各企業ではテレワークが浸透し、業務のペーパーレス化が加速しました。
今後の紙の需要や価格の変動にともなって、印刷業界は今までとは違うビジネススタイルも必要になってくることが予想されます。
この記事では、紙の需要や価格を印刷コストと紙離れを踏まえたうえで解説し、弊社で実際に印刷業界のお客さまから伺った話や、「紙+α」の新しい事業としてデジタルブックを活用いただいてる事例をご紹介します。
1. 印刷業界の現状
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近年起こっている印刷コストの高騰と消費者の紙離れは、印刷業界に大きな影響を与えています。
印刷業の事業者が抱える悩みの種といえる紙の需要の減少。
日本製紙連合会によると、国内における紙・板紙の需要は2008年までは3,000万トン台で推移していたものの、リーマン・ショック後の2009年から大きく減少しています。
印刷・情報用紙に関しては、2010年の国内需要は約990万トンでしたが、2020年では630万トンと、10年間で300万トン以上減っています。
ここでは、紙の需要が減っている理由と今後の需要・価格について見ていきましょう。
印刷コストが高騰している
印刷用紙やコピー用紙などの印刷・情報用紙の価格は年々上昇しています。
最近5年間での製紙会社大手の値上げ要因としては、原材料費やエネルギーコストの高騰、労務費の上昇に加え、円安が続き、5年間累計で約約52%以上の価格上昇となりました。
印刷コストが高騰している原因としては、下記の3つが考えられます。
- 原材料費の高騰
- 製紙パルプ等の物流コストや加工時の発電費用の増加
- 労務費の上昇
- 円安の加速
近年、印刷用紙の材料である重油やチップ、古紙などの原燃料価格の高騰が続いています。
引用:中小企業庁|2022年版「中小企業白書」 第4節 原油・原材料価格の高騰
ロシアによるウクライナ軍事侵攻の影響で、石炭の購入先をロシアからオーストラリアに切り替える流れがあり、オーストラリアの石炭価格が高騰しています。
パルプから紙に加工する際には大量の電力を消費するため、大手製紙企業では工場内に複数の発電所を設置する場合も少なくありません。
加えて、急激な円安が起こっていることも印刷コストが上がっている原因のひとつです。
2024年7月には1ドル=161円を突破し、37年半ぶりの円安水準を更新しました。
印刷会社への影響
原燃料価格とともに物流コストも高騰し、各製紙会社は原材料の高騰にともなう価格上昇をせざるを得なくなっているのが現状です。印刷用紙だけでなく、配送に使用する段ボールやインクなどの価格も高騰しており、それに伴って印刷会社も印刷費を値上げせざるを得なくなっています。
紙離れが起こっている
新型コロナウイルス感染症拡大にともない、働き方改革としてテレワークを導入した企業が増加。
各企業では、従来は紙で作成していた資料などをデジタル化することによってオンライン上で共有する取り組みを実施しました。
印紙代や管理コストの軽減を目的に業務のペーパーレス化が加速している点も、紙の需要が減少している要因といえます。
2. 今後、紙の需要や価格はどうなる?
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印刷コストの高騰に加えて、ペーパーレス化による紙離れが起こっている現在。
印刷コストを削減したい顧客に対して、印刷会社が提案の幅を広げる方法の1つとして、デジタルブックの導入が挙げられます。
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